『あなたは私の婿になる』感想: そのプロポーズ、上司命令

お互い印象が悪かった男と女が、思いがけない出来事をきっかけに惹かれ始める。ラブストーリーで飽きるほど繰り返されてきたこの題材は、日本に限らず、洋画のロマンティック・コメディでもよく使われる定番中の定番。

『あなたは私の婿になる』もその一つ。新しい発見は何もないけど、108分の上映時間を飽きさせず、最後にはきっちり温かい気持ちになれる。べたなストーリーでも良いじゃないか!

あらすじ

ニューヨークの出版社で働くカナダ人で40歳のマーガレット。やり手の編集長だが、仕事に厳しく部下から煙たがられ、影で“魔女”と呼ばれていた。

ある日、ビザ申請の不備で国外退去を命じられたマーガレットは、アシスタントで28歳のアンドリューと結婚すると唐突に言い出す。アメリカ人のアンドリューと偽装結婚して、国外退去を逃れようとするのだが...。

都会にはないもの?

主人公がニューヨークのキャリアウーマンなので、都会的な物語になると思いきや、舞台は一転アラスカに移る。これが『あなたは私の婿になる』のポイント。雄大な自然と、温かい家族、そして善人ばかりの住民たち。ある意味ではファンタジーな世界。

唯一、アンドリューの父親だけが主人公カップルに理解を示さず、悪役として立ち回るが、それも味付け程度で大した障害ではない。都会での生活に疲れた人たちへの清涼剤となる映画としての役割を果たすため、すさんだ空気は丁寧に清浄されている。

個人的には、毒が無い物語は好みじゃない。それでも『あなたは私の婿になる』が楽しめたのは、みずみずしい人物描写のおかげ。とくに、アンドリューの母親と祖母が、とっても魅力的。「かわいいおばあちゃん」ってズルイ。

家族の再生

婿の母親と祖母が大活躍!ということで、家族ものとしての側面も強い。「家族の再生」がもう一つのテーマなのは明らか。でも、家族愛の押し付けではなく、もっと緩やかなつながりとして描いているのが心地よい。

こういった押し引きのバランス感覚が、全編で適切に取られているのが『あなたは私の婿になる』の美点なのだ。

サンドラ・ブロックのヌードと覚悟

なにげに一番驚いたのは、マーガレットを演じたサンドラ・ブロックがヌードになること。しかも「作品的必然性のある美しいヌードシーン」じゃなくて、「笑えるヌードシーン」なのだから。

一応、大事なところは手で隠していた──フルヌードだとレイティングが上がってしまうので仕方がない──けれど、45歳(公開当時)でコメディで脱ぐのは、結構な勇気がいるのでは?サンドラ・ブロックの女優としての覚悟に拍手を送りたい。

ネタバレ

どちらかというと、二人きりのシチュエーションをロマンチックだと感じる(よね?)我々日本人とは違って、欧米では大衆の面前というシチュエーションにときめくようだ。

YouTubeには、大勢に囲まれたサプライズ・プロポーズの動画がごろごろある。

Isaac's Live Lip-Dub Proposal - YouTube

『あなたは私の婿になる』でも、クライマックスのプロポーズは、業務中の職場で大勢の社員たちが見守る中で行われる。日本では、たとえドラマでもちょっと考えられないシチュエーションだよね。

でもこれが、まんまと素敵!アンドリューの告白を固唾を呑んで見つめる女性社員たちのまなざしがいい。彼女たちは、まるで自分がプロポーズされたかのような表情をしているのだ。この演出は女性的だな、と思って調べたら、やっぱり監督は女性でした。

監督のアン・フレッチャーは、手がけた3作品をすべてヒットさせていて、有能ですね。

お気に入り度

ロマンティック・コメディのお手本のような映画『あなたは私の婿になる』は、思いのほか楽しめました。お気に入り度は70%です。

タイトル:
『あなたは私の婿になる』感想: そのプロポーズ、上司命令
カテゴリ:
映画
公開日:
2013年02月05日
更新日:
2014年04月15日

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