『ファム・ファタール』レビュー

やはりブライアン・デ・パルマ監督にはサスペンスがよく似合う。何せヒッチコック好きで有名なデ・パルマだからそれも当然。カメラの長回しやスローモーションなどの「まってました!」なデ・パルマ節で、本作『ファム・ファタール』も実にサスペンスフルに演出している。

───各国のスターが入場するカンヌ国際映画祭の会場で、不穏な動きをみせる一味がいた。彼らの狙いは、ゲストの一人が身にまとっている、ダイヤで埋め尽くされた1,000万ドルの「蛇のビスチェ」。一味はビスチェの強奪に成功するが───

まず目が行くのは「蛇のビスチェ」。蛇をモチーフにした秀逸なデザインで、『ファム・ファタール』のために純金とダイヤで実際に作られたもの。ビスチェといっても実際はアクセサリーのようなもので、着ている女性はほとんどヌードというゴージャスさ。映画を盛り立てるアイテムとして申し分ない出来だ。

そして、そのビスチェを盗み出すまでのシークエンスも秀逸で、デ・パルマらしさを堪能できる。坂本龍一による『ボレロ』調の曲をバックにしたスリリングで昂揚感のある展開は、デ・パルマの近作『スネーク・アイズ』同様に序盤から一気に観客の興味を引く。本当のカンヌ国際映画祭の会期中に、実際にレッド・カーペットを使って撮影しただけあって臨場感にあふれている。

さて、サスペンスのお約束と言えばどんでん返し。『ファム・ファタール』にも当然のごとく用意されているが、そのどんでん返しの内容がこの映画の賛否の分かれどころだろう。腑に落ちない人も多いようだが、どんでん返し後に、それまで積み重ねてきた伏線がすべてラストに向けて帰結する様は見事だと私は思う。

ブライアン・デ・パルマの演出は実に映画的。ときに大仰でもあるが、それが映画館の大スクリーンには映える。一度ハマればクセになるデ・パルマ節を『ファム・ファタール』で存分に楽しんでほしい。

評点(10点満点)

【7.5点】やはりブライアン・デ・パルマ監督のサスペンス映画は良い。

タイトル:
『ファム・ファタール』レビュー
カテゴリ:
映画
公開日:
2006年12月17日
更新日:
2018年05月30日

この記事をシェア

あわせて読みたい