『キスト』レビュー
───幼いころから<死>に特別な興味をもっていたサンドラ(モリー・パーカー)。大人になり斎場で働き始めた彼女は、遺体を教会へ車で運ぶ最中に初めて死体とのキスを経験する。そのキスは彼女に愛の悦びをもたらした。やがて彼女に想いを寄せるマット(ピーター・アウターブリッジ)が現れ───
『キスト』は、ネクロフィリア【屍体愛】を描いた映画。とは言え、ホラーやポルノではなく、サブカル系少女漫画に近い感覚の映画である。屍姦のシーンもあくまでファンタジックに描写され、観ていて気分が悪くなることはない。
女性であるリン・ストップケウィッチが監督・脚本を手掛けた本作は、男根主義に陥りがちな、あまたの映画とは違う視点から世界を見ている。詩的で、あたたかい眼差を二人に向けるような演出で包み込まれているが、その中には悲劇的なまでの孤独さがゴロンと転がっている。男性の方は二人の結末を受け入れがたいかもしれない。しかし、この映画は観るものに愛と性、そして死を見つめ直すきっかけを与えるだろう。
重厚なテーマを掲げているけれど、肩肘を張らずに、一風変わった青春映画として鑑賞することが出来る作品です。ミニシアター系の作品が好きな人なら、『キスト』は長く心に残る一本になるでしょう。
評点(10点満点)
【7点】女性におすすめ。
- タイトル:
- 『キスト』レビュー
- カテゴリ:
- 映画
- 公開日:
- 2006年09月08日
- 更新日:
- 2018年05月30日