『LOOPER/ルーパー』感想: あいつが俺で、俺があいつで
今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのジョゼフ・ゴードン=レヴィットと、老いてなお盛んなブルース・ウィリスの新旧2大スターがダブル主演。おまけに2人が演じるのは同一人物!?というそそられる設定にまんまと釣られて映画『LOOPER/ルーパー』を観ました。
同一人物なわけは、本作がタイムトラベル物だから。25歳の主人公ジョセフ・シモンズをジョゼフ・ゴードン=レヴィットが、55歳をブルース・ウィリスが演じています。
あんなにキュートなジョゼフ・ゴードン=レヴィットが、30年後にブルース・ウィリスになっちゃう、という無理のあるキャスティングを初めとして、いろいろと強引なところが満載。でも、そこが味になっているSF映画でした。
あらすじ
タイムトラベルが可能になった2070年代。犯罪組織は効率的な暗殺にタイムトラベルを悪用していた。2040年代を生きるジョセフ・シモンズは、未来から送られてくる標的を処理する殺し屋「ルーパー」を家業にしていた。ある日、標的として送られてきた30年後の自分自身を取り逃がしてしまったシモンズは、組織に追われる身となるが……。
タイムトラベルとタイムパラドックス
タイムトラベルを扱う上で避けられないのがタイムパラドックス。その矛盾を回避できるパラレルワールド制が主流の中で、『LOOPER/ルーパー』では、現在と未来が相互に進行形で影響しあうという無茶なルールを採用してます。
なので物語に矛盾は生じるけれど、そのルールを活かした世にも恐ろしい拷問シーンなど、独創性につながっているのがポイント。つじつま合わせよりも、面白さを優先した割り切りがいさぎよい。
ちなみにタイトルが『LOOPER/ルーパー』ですが、いわゆるループものとは少し違うので、その手の物語を期待しちゃ駄目ですよ。
アクションと映像
ブルース・ウィリスが主演のSF映画なので、アクション成分が高目と思いきや、ドラマよりの割と地味な作りです。
この点は不満。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが『インセプション』や『ダークナイト ライジング』で意外なほどアクションとの相性の良さを見せただけに、もう少しはアクションを観たかった。
3千万ドルというSF映画としては低めの予算の大半は、主演2人のギャラに消えたようで、映像がチープなシーンもちらほら。
とくに地上1メートルほどを浮かんで走るホバーバイクの浮遊感のなさは目を疑うほど。「それ、カメラフレームの外で台車に載ってるよね!」と突っ込みを入れずにはいられない。
残りの予算をつぎ込んだと思わしきクライマックスの迫力はなかなかでしたが。
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの顔について
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは、くん付けで呼びたくなる優しい顔立ちが特徴。出世作の『(500)日のサマー』は、彼とズーイー・デシャネルのかわいらしさが何よりの魅力だった。
ところが『LOOPER/ルーパー』のジョゼフ・ゴードン=レヴィットくん、なんだか野暮ったくてオッサンぽい顔をしていて違和感がある。
これ、鑑賞後に知ったのだけど、ブルース・ウィリスに似せる特殊メイクをしているからなんだとか。それにしたって似てないんだから、そのままの顔が良かったな。かわいい顔がもったいない。
ネタバレ
タイムトラベルのルールが強引なだけに、物語も強引に進むかと思いきや、複線の回収は意外にも丁寧。
- TK(念力)ではコインを浮かすのが精一杯の世界で、ライターを楽々と操るサラ
サラの血筋が優れたTKの持ち主であることの示唆だった。
- サラが、幼いシドがキレただけで金庫に逃げ込む
シドは人並み外れたTK能力者だった。
- 軍隊でもなければ無理だと思われた犯罪組織の統一を一人で成し遂げたレインメーカー
レインメーカーの正体はシドで、TK能力を使って統一した。
- レインメーカーは、ループを片っ端から閉じ始めている
母親(叔母だと勘違いしていたが)をルーパーに殺されたシドの復讐だった。
- ラッパ銃の射程は短い
オールド・ジョーが射程外だったため、ヤング・ジョーは自害するしかなかった。
ラッパ銃の射程に関しては、クライマックスを成立させるためのご都合主義だけど、とにかく観ていて引っかかる要素は後の展開にちゃんとつながっている。
この破天荒かつ丁寧な脚本は、監督も務めたライアン・ジョンソンによるもの。個人的には、脚本を書ける監督が手がけた映画は良作の確率が高いと思う。
お気に入り度
気になる点は有りつつも、総評では良作と言って差し支えはないかな。
でも、題材とキャスティングから受けた期待値は上回らなかったので、お気に入り度は70%です!
- タイトル:
- 『LOOPER/ルーパー』感想: あいつが俺で、俺があいつで
- カテゴリ:
- 映画
- 公開日:
- 2013年02月01日
- 更新日:
- 2014年04月15日