『SEX』上條淳士 書評

80年代後半にヤングサンデーにて連載されていた『SEX』をご存知だろうか?著者は上條淳士。研ぎ澄まされた画風で後進に多大なる影響を与え、フォロアーは現在でも後が絶えない。そんな彼ら(当時はYOKOという女性と2人で書いていた)が『TO-Y』で一世風靡したのちに、満を持して世に送り出した作品である。

上條淳士みずから「サイコーですから」と言う『SEX』は、単行本にして7巻分の原稿量がありながら、連載中には1巻のみの刊行にとどまり、連載完了後にも2巻がでたきりで音沙汰がなくなってしまい、なかば伝説と化していた漫画である。その『SEX』が12年のときを経て、初めて完全単行本化された。

───物語は美しき中学生"カホ"が修学旅行に訪れた沖縄で、青年"ユキ"に出会うところから始まる。ユキはなにやらキナくさい香りがして───

沖縄、横須賀、福生など「金網のある街」を舞台にして進む物語は、つねに薬莢の焦げた匂いがしてくるような、ヒリヒリとした展開を見せる。米軍基地がある街に特有の雰囲気と、80年代の空気感を鋭利に切り取った本作は、21世紀を迎えた今でも色あせる事を知らない。

連載をリアルタイムで読んでいた人は勿論、上條淳士のフォロアーを通して新しく「発見」した人にも、本作はフェイバリットになるに違いない。

評点(10点満点)

【9点】上條淳士の最高傑作。

余談

上條淳士さんは漢字が紛らわしいですよね。よくある誤記に

などがありますが、こうして並べると間違い探しのようで、どれが正解だか分からなくなります。

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タイトル:
『SEX』上條淳士 書評
カテゴリ:
公開日:
2006年09月04日
更新日:
2018年05月30日

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