『8 エイト』上條淳士 書評

───渋谷の宇田川中学校に転校してきた蜂谷詠兎(ハチヤエイト)。エイトは闇の賭博大会「13ナイト」で事故死した元クラスメイトのマサトに生き写しで───

ここ10年の上條淳士は、あまりに寡作。週刊誌に連載していても休載が目立ち、無事に掲載されている方が珍しいくらい。おそらくはその遅筆が原因で、『8 エイト』は連載半ばで打ち切りの憂き目にあっている。

打ち切り作品だが、最終巻の4巻に追加収録されている『カウンター』という『8 エイト』外伝によって、一応の完結を見せてはいる。しかし、数々の伏線は未消化なままだし、「結末も当初考えていたものとは少し違う」と作者あとがきにも書かれている有様だ。

主人公はエイトを始めとする宇田川中学校のクラスメイト8人。単行本1巻につき1人が表紙を飾っていることから、おそらく全8巻のボリュームを想定していたのだろう(タイトルが『8 エイト』で全8巻だなんて、いかにも上條淳士らしい美学だ)。それが4巻で終わりなのだから、なんとももどかしい。

作品自体は文句なし。作画は相変わらず冴えているし、展開はスローだが、伏線を巧みに張り巡らせることで飽きさせない。渋谷を舞台にエックス・ゲームに興じる中学生を無理なく描くのだから(既に40歳を越えているはずの)上條淳士に感性の衰えはいまだ感じない。

『8 エイト』の連載開始時に、「10代の主人公を描くのはこれが最後」と上條淳士が語っていただけに、『8 エイト』が打ち切りに終わってしまったのは実に惜しまれる。正当な続編をなんとしてでも読みたいと思わせる、未完の傑作だ。

評点(10点満点)

【8点】ホント、打ち切りは勿体ない。

関連漫画

タイトル:
『8 エイト』上條淳士 書評
カテゴリ:
公開日:
2006年12月07日
更新日:
2018年05月30日

この記事をシェア

あわせて読みたい