『ディセント』レビュー

ただならぬ雰囲気の劇場予告編で、『ディセント』は多くの映画ファンに期待を抱かせた。そして公開を迎えた『ディセント』は、その期待に応える面白さと、予想を大きく裏切る意外性を持った、傑作ホラー映画だったのである。

───交通事故で家族を亡くし意気消沈しているサラは、立ち直るためのきっかけとして、女友達だけで出掛ける、年に一度恒例の冒険旅行に参加することを決めた。今年の冒険は洞窟探検。和気あいあいと洞窟に踏み込む一行だが、人が一人通れるほどの細い穴を抜けているとき───

まずは洞窟に入るまでの不穏な空気感が見事。なにか良くないことが後に起きることを予感させる、張り詰めた緊張感を持つ導入部で観客を一気に引き込む。その緊張感を保ったまま、暗く狭い洞窟に入るのだから堪らない。スクリーンの向こう側の出来事なのに、こちらまで息苦しくなる。閉所恐怖症の人は観ていられないだろう。

そして中盤から怒涛の展開が待っている。この劇的な展開を受け入れるか否かで『ディセント』の評価は大きく変わる。本作が多くの絶賛を博しただけではなく、罵倒も受けたのはその為だ。劇場公開前とは違い、今では公式サイトですらその展開をネタバレしてしまっているが、幸運にも貴方がまだネタバレしてないのなら、是非とも前知識なしで観て欲しい。その方が、奈落に突き落とされるような恐怖感が味わえるはずだ。

とにかく嫌な展開が続く構成力と、生理的な圧迫感を維持する演出力は、監督のみならず脚本も手掛けたニール・マーシャルによるもの。『ディセント』で成功を収めた彼は、次作が最も待ち望まれている監督の一人だろう。

暗く、静かで、哀しい余韻のラストを見終わる頃には、緊張が続いたせいでぐったりしていた。劇場内の明かりが点いてホッとしたのは久しぶりだ。DVD で鑑賞する際には、部屋の照明を消して、暗闇の中で鑑賞することをおすすめする。

評点(10点満点)

【8点】傑作。スプラッタ描写も有るので注意。

余談

ディセントのポスター 『ディセント』は映画本編だけではなく、劇場用ポスターも傑作です。本編の鑑賞前と鑑賞後で、まったく見方が変わってしまう面白みがある一枚。場内を出てもう一度見たときには、「なるほど!」と手を打ちました。

ネットで各国のポスターを見ましたが、この日本のデザインが一番優れていると思う。このワンシーンを切り取った担当者の感性に拍手!

タイトル:
『ディセント』レビュー
カテゴリ:
映画
公開日:
2007年06月06日
更新日:
2018年05月30日

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