『ダージリン急行/ホテル・シュヴァリエ』レビュー

映画そのものがキャラクターを持ち、そして雄弁に語りかけてくる。優れた表現者たちが創り出す映画とは、得てしてそういうものだ。『ダージリン急行』もまた、劇中の一瞬一瞬からこの映画に宿った"人となり"が心象として伝わってくるような、生気あふれる映画である。

───父の死をきっかけに絶縁状態になっていた三兄弟が、長男フランシスの提案でインドを走るダージリン急行に集まった。フランシスはこの旅で兄弟の絆を取り戻そうとするが───

三兄弟を演じるオーウェン・ウィルソン,エイドリアン・ブロディ,ジェイソン・シュワルツマンらは、三者三様の個性的な良い顔付きをしていて、その取り合わせも実に絶妙。包帯,サングラス,髭のアクセントも印象深く、三人が並ぶだけで絵になる。彼らを兄弟役にキャスティングした時点で本作の成功が約束されたと言っても過言ではない位にその絵面は魅力的だ。

物語のノリは、絵面通りにオフビートでファニー。「崩壊した家族」を描きながらも堅苦しさのないロードムービーだ。思い掛けないシリアスな展開もあるが、インドの大らかな空気感が湿っぽさを薄めている。

そんなインドを走り抜ける列車"ダージリン急行"が実に好い。インドの実際の列車に手を加えた車体は、内装も外装も素敵すぎるくらいだ。驚くことに、セットは一切使わず、その列車を本当に走らせて全てロケ撮影しているのだから恐れ入る。そのため車内のシーンが続いても開放感があるし、車窓から見えるインドの景色は清々しい。

監督はウェス・アンダーソン。彼の手掛けた『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(未見)がやたらと高評価なので前々から気になっていたが、なるほど確かに素晴らしい映画を撮る監督である。これでまた新作が毎回楽しみな監督が一人増えた。

評点(10点満点)

【7点】三兄弟のスチール写真が気に入ったなら必見。

『ホテル・シュヴァリエ』

プロローグとして本編前に上映される『ホテル・シュヴァリエ』は、米 iTunes で先行公開させた際にナタリー・ポートマンのヌードシーンが大きな話題を呼んだ短編映画である。

デビュー作の『レオン』では可愛らしい少女だったナタリー・ポートマンも今ではハリウッドを代表する美女になった。そんな彼女がボディダブルなしで脱ぐのだが、バストトップの露出がない所謂セミヌードなので過度の期待はしないように。とは言え、白のショートソックスのみの姿態は十分にコケティッシュではある。

さて、『ホテル・シュヴァリエ』は、洒落たアートムービーに仕上がっていて行間を読むことが楽しめる。ジャン=リュック・ゴダール監督作が好きな人なら本編よりも気に入るかもしれない。

『ダージリン急行』の新聞広告には、"本編の上映前に、短編『ホテル・シュヴァリエ』がございます。劇場のみの上映となりますのでお見逃しなく!"と書かれている。嘘か誠か DVD(BD) には収録されない可能性があるので、気になる方は劇場に足を運ぶべきだろう。

余談

三兄弟が持ち歩くスーツケースがお洒落で、どこのブランドか気になった人も多いのでは?パンフレットによると、あのスーツケースはルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブスがこの映画の為だけにデザインしたものなんだとか。撮影用の予備もない一点物のオートクチュールなので、残念ながら店頭には並んでいません。

タイトル:
『ダージリン急行/ホテル・シュヴァリエ』レビュー
カテゴリ:
映画
公開日:
2008年03月13日
更新日:
2018年05月30日

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