『REC/レック』レビュー

「事件に巻き込まれた被害者がその事態を映したビデオ」。映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(以後『BWP』)は、その反則的とも言える斬新な設定と手法が話題を呼び、全米で大ヒットした。ところが、卵を割って立てたコロンブスを非難した人がいたように、『BWP』もまた多くの人たちから扱き下ろされる羽目になる。

しかし近年になり、その手法の面白味と可能性がクリエイターたちに再評価され、新世代『BWP』と呼べる映画が登場し始めた。『REC/レック』は、『クローバーフィールド』と並んで、『BWP』スタイルを発展させた意欲作である。

───バルセロナのローカルテレビ局が、ドキュメンタリー番組の撮影で消防隊の同行取材を行っていた。通報があったアパートに到着した消防隊とテレビクルーを待ち受けていたのは、想像を絶する惨劇だった───

『REC/レック』の舞台となるのは、深夜の封鎖された5階建てアパート。この限定された空間と「1台の手持ちカメラによる主観撮影」による狭い視界は、相乗効果となって閉塞感を織り成し、恐怖を生みだす。

そして、恐れと緊張による圧迫感が高まってくると、「振り返らないと後ろが見えない」という主観撮影ならではの視界が効いてくる。『BWP』が「目を開けているのが怖い。閉じるのも怖い」ならば、『REC/レック』は「振り返るのが怖い。振り返らないのも怖い」と言ったところか。

状況は、奈落へ転げ落ちるかの如く、ラストに向けて指数的に悪化していく。後半の畳み掛け方は見事で、クライマックスに於ける怒涛の展開と恐怖感は尋常でない。予期せぬ事態に頭が混乱しているところに「これでもか!これでもか!」と怖い展開を叩きつけられるのだ。

もし、自分が実際にクライマックスの状況に陥ったならば、失禁した挙句に失神してしまうだろう。そのくらい怖い。このシークエンスによって、『REC/レック』は、その名をホラー映画史に刻むことになる筈だ。

主観撮影の手法にはまだ伸び代がある。『REC/レック』は、そう感じさせるくらいに『BWP』スタイルの利点が遺憾無く活かされたホラー映画である。

評点(10点満点)

【7.5点】「卵は割らずに立てなきゃ意味がない」と言う方にはお薦めできない。

シリーズ

余談

主観撮影は得てして手ブレが酷く、映画館の大スクリーンで観ると乗り物酔いを引き起こす場合があります。しかし、本作はプロのテレビカメラマンが撮っている設定の為、比較的画像が安定しているので、手ブレが苦手な方でも問題なく鑑賞できるでしょう。

ちなみに、本国スペインでの大ヒットを受けて、アメリカで本作のリメイク版『Quarantine』も製作されました。『Quarantine』オフィシャルサイトで公開されている予告編を見る限りでは、オリジナル版『REC/レック』の出来の方が良さそうです。ネタバレ気味の予告編なので、本作を未見の人は見ないほうが良いかも。

タイトル:
『REC/レック』レビュー
カテゴリ:
映画
公開日:
2008年07月09日
更新日:
2018年05月30日

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