『SAW3/ソウ3』レビュー

目覚めたら食肉工場の地下室
傍らにはルールを告げるカセットプレイヤー
扉を開けると3人の男女
彼らは息子を死に追いやった交通事故の関係者たち…

いよいよシリーズも3作目。前作は、『SAW/ソウ』とはまったく関係のない脚本を『SAW2/ソウ2』としてリー・ワネルがリライトした、少しばかり強引な手法で制作された作品だった。しかし今作は、1作目で主演・脚本を務めたリー・ワネルが再び脚本を一から書き上げたことで『SAW/ソウ』シリーズとしての純度を取り戻し、シリーズファンの溜飲を下げる作品に仕上がっている。

『SAW2/ソウ2』では薄れがちだったダークさが復活しているのと同時に、今までのシリーズでは描かれなかった人間ドラマに焦点をあわせる新機軸もある。さらに、1・2作目のストーリーに密接に絡み合う脚本は実に見事なもの。今まで隠されていた新たな事実が次々と明かされる展開には、シリーズファンなら興奮を隠せないはずだ。

そして、『SAW/ソウ』シリーズといえば衝撃のラスト。あまりにも1作目のラストシーンが鮮やかで素晴らしかった為に、以後のシリーズのラストシーンにも、観客は過度の期待を寄せることになった。『SAW/ソウ』シリーズが背負った重い十字架とも言えるその期待にリー・ワネルは応えている。

反則ギリギリだった1作目の真相(だからこそ面白かったのだが)に比べて、『SAW3/ソウ3』は本格ミステリー的なフェアなものになっている。ヒントが作中に満遍なく、丁寧にちりばめられているだけではなく、1・2作目にすら今作の真相に近づくヒントがある。その巧妙なトリックは、『SAW/ソウ』はリー・ワネルとジェームズ・ワンの運と若さの勢いだけの産物ではなく、間違いなく彼らの才能によるものだったと確信させる。

1・2作目を観たのなら、もう引き返せない。すべてのゲームが終わるまで、ジグソウから逃れることは出来ないのだ。

評点(10点満点)

【7.5点】完成度は、明らかに前作より高い。日本に於ける評価は低いが、私は好きです。

注意!

『SAW3/ソウ3』は、同シリーズの過去作を鑑賞していることを前提の作りになっています。事前に過去作を観てから今作を鑑賞しましょう。

シリーズ

余談

日本公開版の『SAW3/ソウ3』は、レイティングをR-18(18歳未満は観賞禁止)からR-15に下げるため、4つのシーンで明度を暗く修正されています。しかし、元々暗い色調で撮影されているので、修正は気にならない(気付かない)のでご安心を。むしろ、想像に任せられる部分が増え、日本人の感性に合っている気がします。

ネタバレ

(注) ここより下には『SAW/ソウ』シリーズの結末に触れる記載がありますので、必ずシリーズ全編を観賞後にお読みください。

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本格ミステリー?

『SAW3/ソウ3』の結末の白眉は、「ジグソウは最前列でゲームを見ている」というシリーズのルール(お約束)を律儀に守っていること。ジェフのゲームはアマンダがモニター越しに見ているだけ。つまり本当のゲームではない。すなわち、ジグソウ(ジョナサン・クレーマー)が最前列で見ているアマンダとリンこそが真のゲームプレイヤーである。という具合に、いとも簡単に真相に辿り着かれる可能性のあるリスキーな構成だ。十分に推理可能な結末。それが本文で「本格ミステリー的なフェアなものになっている」と書いた所以である。

ジグソウは死んだ?

シリーズ映画の醍醐味の一つとして、「周到に繰り返されるシチュエーション」がある。さて、ジグソウが切られたのは「喉元」だ。よく思い出して欲しい、『SAW/ソウ』シリーズで喉を切られた登場人物はジグソウが初めてではない…。

タイトル:
『SAW3/ソウ3』レビュー
カテゴリ:
映画
公開日:
2006年11月21日
更新日:
2018年06月22日

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