『X&Y』コールドプレイ レビュー

最初に一聴したときは、前作よりも随分と野暮ったくなったなと感じた。

やわらかい音でロック的なエッジがなく、迫力よりも奥行きを優先した音像になっている。曲も過剰にドラマチックで、パーソナルな感覚に欠けているように思え、今一つな出来だと。

しかしどうだろう、聴いたあとに他の用事をしていると頭の中をグルグルと『X&Y』の曲が流れるではないか!

聴いた直後だけではない、次の日も、その次の日も気が付くと頭の中で流れている。まんまとハマってしまった。これはもう理屈抜きに楽曲が優れている証拠だろう。

始めに感じていた過剰さも、聴き込んでいるうちにスケールの大きさに昇華された。眼を閉じて聴いていると、ライブハウスではなくスタジアムが目に浮かぶスケール感。と、ここで気が付いたのだが、最近のロックに多いスピーカーに張り付くような音ではなく、ドラムが遠くにある奥行きのあるミックスは、大きな会場を想像させることを狙ったのではないか。なんにせよ、耳に優しく聴きやすい音だ。

ただ、前作にはあった「失恋したアタシ(ボク)のテーマソング」になるような曲。例えば海外ドラマの『アリー my Love』で登場人物の心理描写を表すBGMに使われるような、そんなパーソナルな曲がもう少し欲しいな、と私は思った。

「僕たちはU2を抜かなければならないと思っている」という彼らの言葉が、実現するのはそう先ではないと思わせる、そんな力強いアルバムだ。

評点(10点満点)

【7点】「In My Place」を超えるキラーチューンは収録されていない。

タイトル:
『X&Y』コールドプレイ レビュー
カテゴリ:
音楽
公開日:
2006年09月07日
更新日:
2018年05月30日

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