アニメ『惡の華』第1話感想

ネタバレあり

ボードレールに心酔する中学生の春日高男は、クラスメイトの佐伯奈々子に密かな想いを寄せていた。ある日の放課後、忘れ物を取りに教室へ戻った春日は、佐伯の体操着袋が床に落ちているのを見つけ……。

『惡の華』は、別冊少年マガジンに連載中の漫画が原作です。しかし、アニメ版はロトスコープで制作されているため、原作とは絵柄がまるで違います。なので原作のファンからは、ブーイングが噴出しているようですね。

幸運にも原作を読んでいない私は、違和感とは無縁で、存分に楽しめました。そう、あえて「幸運」と書きたいくらい、出来のよいアニメだったのです。

第1話は、春日が佐伯の体操着を放課後の教室で見つけるまで。まだ、ほとんどなにも起きてません。平穏な繰り返しの日常を執拗に描いた回でした。あまりデフォルメ感がない、中高生あるあるみたいな日常。

こうしたリアルな日常をフィクションで描くと、不思議と逆にうそ臭く見えたりします。でも『惡の華』は自然にすっと入ってきました。アニメとも実写とも違うロトスコープは、現実と虚構の境界線を曖昧にする効果があるようです。

また、思春期における日常の不確かさにもロトスコープがマッチしています。ロトスコープは、きっちり手段として機能していて、「手段の目的化」にはなっていません。『惡の華』の物語を描くのに必然だったと感じました。

演出も冴えています。劇中に登場するボードレールの詩集『惡の華』の表紙になっているまがまがしい花が、春日の心情とリンクして咲く演出は、まんまと刺さりました。

春日を演じる植田慎一郎は、新人ということもあって、演技がたどたどしい。かえってそれが、まだ何者でもない春日に合っています。本職の声優は、良くも悪くもうますぎる。現実では、感情表現のうまい人って実は多くないですから。

というわけで、原作と絵が違うというだけで敬遠するのはもったいないアニメでした。

タイトル:
アニメ『惡の華』第1話感想
カテゴリ:
テレビ
公開日:
2013年04月18日
更新日:
2013年07月15日

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