アニメ『惡の華』第11話感想

ネタバレあり

峠での出来事から1ヶ月後。春日高男ら三人は、何事もなかったかのように学園生活を送っていたが、お互い口を利かなくなっていた。佐伯奈々子の様子を見かねたクラスメイトの木下は、春日と佐伯を引き合わせるが……。

中学時代に同級生の女の子二人から、どっちを選ぶのかと詰め寄られる。なんていう「それが特別じゃないなら、いったいなにが特別なんだよ!」と野暮なツッコミを入れたくなるような経験をした春日くん。そんな彼が補導されたパトカーでつぶやいた一言。

「街だ……。僕は……どこにも行けないんだ」

どこにも行かないことを選んだのは自分なのに、まるでなにかに行く手を阻まれたみたいな言い様が見苦しい。とはいえ、春日くんはまだ中学生。どこにも行けないのは自分自身のせいだと気が付かないのも仕方がない。

ロトスコープの元になっている実写キャストの植田慎一郎さんが19歳だからか、春日くんがどうにも中学生に見えなくて、青臭さが必要以上に目についてしまいます。これはロトスコープの弊害ですね。クラスメイトも含め、実際に中学生をキャスティングするのは無理だったのでしょうか。

さて、帰宅した春日くんを待っていたのはクズすぎる母親でした。一方的に感情をぶつけるだけで、まるで春日くんの気持ちを顧みません。

「間違ってた、あたしたちの子育てが間違ってたのよ!」

母親が吐いたこの台詞は、決して反省の弁ではありません。春日くんを遠まわしに攻めているだけ。自分の思い描いた子供にならなかった春日くんに浴びせかけた呪詛の言葉です。本当に間違っていたと思ったのなら、もっと真摯に春日くんと向き合ったはずですから。

春日くんが過剰に内証的なのは、思春期をこじらせたからだと思っていたけれど、このクズな母親の所為だったのですね。

この出来事の後、なぜ息子の春日くんが、母親である自分に他人行儀で異常なほど礼儀正しく接してくるのか。この母親が理解することはないでしょう。早く大人になって家を出るしかありません。それでもその先の嫁姑問題は避けられないかと思うと、春日くんが不憫で仕方がない。

毒になる親 一生苦しむ子供
著作者:
スーザン・フォワード
出版社:
講談社

不安、怒り、過剰な義務感、そして罪悪感。子供時代に植えつけられた「感情の種」が大人になったあなたに害を与え続ける。親に奪われた人生を取り戻すための、具体的な方法をアドバイスする“現実の希望”にみちた名著。

圧巻だったのが、6分半にも及ぶ春日くんの夢のシーン。赤く燃える街並みを背景に、足元一面に咲いていた悪の華が、堰を切ったように渦巻き舞い上がる!アニメ『惡の華』は、毎回なにかしらグッと惹きつける演出があって感心します。ロトスコープだからというだけで、アニメ『惡の華』を敬遠するなんてもったいない、と改めて言いたい。

さて、佐伯さんを振って、中村さんを選ぶことを決意した春日くん。でも、その理由は、どうも中村さんには自分が必要だからと思ったからみたい。春日くん自らが必要とする人を選ばなくては、春日くんの望む場所には行けないというのに。

タイトル:
アニメ『惡の華』第11話感想
カテゴリ:
テレビ
公開日:
2013年06月28日
更新日:
2013年07月15日

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