自分の信じたいものを信じることの落とし穴

人は、自分が信じたいものを信じる。

この、よく見聞きする常套句が真実だと痛感する体験をしたことがあります。以前、某有名チェーン店でアルバイトをしていたときのこと。勤務していた店舗が、振り込め詐欺の被害にあったのです。

手口はいたってシンプル。「今月分のテナント料が振り込まれていない。至急支払ってくれ」と電話があって、お金を取りに来た男に店長が渡してしまったのです。だまされたと気づいたときには後の祭り。男の行方はもう分かりません。

なんて間抜けな話だとお思いでしょうか。しかし、私は店長のことを馬鹿にはできませんでした。なぜなら、店長がたやすく信じてしまった背景を知っていたから。その事情がまさしく、人は信じたいものを信じるのだ、ということを実感させるものだったのです。

うそを信じたわけ

よくある話で、本部の人たちと店長との間で齟齬が生じていました。「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」とはよく言ったものです。店長は、しきりに愚痴をこぼしていて、本部への不満が募っているのは明らかでした。

そこへ先述の電話です。「ほらみろ、支払いを忘れるなんて、やっぱり本部の連中は無能じゃないか」と腑に落ちてしまってもおかしくありません。偶然にも、振り込め詐欺の内容は、本部に対する店長の不満を正当化させるものだったのですから。

また、本社の経営が厳しい状況だという噂も流れていました。それも思い込みに拍車を掛けたのかもしれません。

嫌いな対象のネガティブな情報を信じやすいのは、私にも心当たりがあります。

こういった、自分の先入観に一致する都合のいい情報だけを求めて、その先入観を確かものにしようとする傾向を“確証バイアス”と呼ぶそうです。

確証バイアス

たとえばYahoo!知恵袋や発言小町。質問しておきながら、自分の意向に沿った答えだけ評価して、反対意見はスルーするトピ主をときおり見かけますよね。求める答は、質問する前から決まっているのです。

たとえば香川3人殺害事件。一部のマスコミが、被害者である父親を犯人扱いするようなひどい偏向報道をしました。ところが、マスコミをマスゴミだと普段から叩いているような人でさえ、この偏向報道を鵜呑みにしたケースがネットで散見されました。

スキャンダラスな結末を望むがあまり、疑っていたはずのマスコミを信じたのです。

おわりに

詐欺にあったり、マスコミに踊らされたり、TwitterやFacebookでデマを拡散してしまったり。信じたいものを無闇に信じると、望まない結果を招きかねません。

信じたいものに関する情報に触れるときは、確証バイアスのことを思い出しましょう。人の心理的傾向を知ることは、物事を冷静に判断する手助けになります。「知識は力なり」ですね。

タイトル:
自分の信じたいものを信じることの落とし穴
カテゴリ:
心理
公開日:
2013年04月29日
更新日:
2014年04月15日

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