『鏑木清方描く四季 季節の再来』鑑賞記

テレビ東京の『美の巨人たち』で日本画家の鏑木清方画伯を知ってから、鎌倉にある記念美術館を幾度となく訪れました。

この美術館、実にささやかな建物なのです。大判の絵画は二三点だけの展示で、あとは小さな下絵やスケッチのみ。展示作品が入れ替わるたびにマメに足を向けないと、お目当ての作品を観ることができないのです。(そのぶん観覧料は200円とお手頃です)

二年前に『美の巨人たち』で「運が良ければ会えるでしょう」と、小林薫さんの語りで紹介されていた傑作『一葉女史の墓』。今回の特別展「清方描く四季-季節の再来-」で、ようやくその絵に会うことができました。

しかもこの特別展は、『秋宵』『深沙大王』『金色夜叉の絵看板』『曲亭馬琴』と、何とまぁ贅沢な展示群。普段の所蔵品展の倍以上は見応えがあります。

どれも素晴らしい作品なのですが、目がいくのはやはり美人画。古い日本画の美人像は現代の美意識とずれていることもありますが、鏑木清方氏の描く女性は今の目で見ても美しい。女性だけではなく、かんざしや着物もとにかく美しいのです。

残念ながら今回は展示されていませんでしたが、以前に観た美人画の『ためさるゝ日』などは、匂い立つ妖気にすっかり魅入られて、しばらく絵の前から動けなかったくらい。

今回の特別展で、未見だった鏑木清方記念美術館所蔵の作品は、あらかた観ることができました。しかし、横浜美術館蔵の『遊女』や新潟県立近代美術館蔵の『春の夜のうらみ』など、まだまだ観たい作品が目白押しです。どちらの作品も目録で観ただけで妖艶な色香が漂ってきます。実物はさぞかし美しいことでしょう。

鎌倉小町通りから横道にほんの少し入るだけ。そこに鏑木清方記念美術館はあります。鎌倉散策に行くなら、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。ちょっと贅沢な時間が過ごせますよ。

タイトル:
『鏑木清方描く四季 季節の再来』鑑賞記
カテゴリ:
イベント
公開日:
2007年04月24日
更新日:
2018年05月30日

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