『キャビン』感想: ホラーの最先端、あるいは袋小路

日本での公開がまだ決まっていないホラー映画を先取りしようと、YouTubeで予告編をあさっていると、『The Cabin in the Woods』なる作品に目を奪われました。

5人の陽気な大学生が、山奥のキャビンへバカンスに出かける。これは、もう見飽きた設定で、なんてことはありません。でも、彼らが乗ったキャンピングカーを引きで映したシーンを観て、衝撃が走りました。

空を飛ぶ一羽の鳥が、見えない壁に、ぶつかって死ぬ。

鳥がぶつかった瞬間その透明な壁は、幾何学模様が浮かび上がり、科学的に作られたバリアのようなものだと分かります。いったいこの映画はなんなんだ!?とにかくネタバレ厳禁なのは間違いない。動画を即閉じて、日本での公開をただ待つことにしました。そして1年の時を経て、ようやく本邦に上陸したのが『キャビン』です。

あらすじ

まじめな女子大生のディナは、友人のジュールスに誘われて、仲間と5人で山奥の別荘へバカンスに出かける。しかし、彼らは何者かに監視されていた。何も知らないディナたちが、バカンスを満喫しようと別荘ではしゃいでいると……。

はじめに

『キャビン』を観る前に知っておいて欲しいのは、本作がホラー映画ファンへ向けたプレゼントのような作品だということ。

ホラー映画の傑作たち、たとえば『13日の金曜日』『死霊のはらわた』『ヘル・レイザー』『キューブ』などを「観ていて当然!」という人じゃないと、『キャビン』の本当の面白さは味わえないでしょう。とくに、ばかばかしくて笑えるポイントを見過ごしてしまうはず。

「ばかばかしい」は褒め言葉

そう、『キャビン』は実にばかばかしいのです。ホラーではあるけれど、さほど怖くない。怖い映画を観たいならおすすめしません。名作へのオマージュや、クライマックスのはじけっぷり、明後日の方へ突き進むばかばかしいストーリーをにやにや楽しむ。

そんな、ひねくれた楽しさを求めるならば、最高の一本となることを約束します。

ネタバレ

『キャビン』を観て初めに驚いたのは、主人公たちを監視して、すべての出来事を仕組んでいる謎の組織の存在をオープニングで明かしてしまうこと。

この構成によって、ホラー映画のお約束を主人公たちに無理やり踏襲させる笑いの要素が活きてくるものの、もうすこし引っ張って謎めいた雰囲気を味わいたかった気もします。

種明かしを早々にされてしまったので、興味が向かうのは組織の目的です。どうやら誰かを満足させるために惨劇を仕組んでいるようです。 もしかしたら、その惨劇を求めている誰かとは、他ならぬ『キャビン』を鑑賞する私たちなのかな? なんてひねくれた予想をしていたら、黒幕は「太古の邪神」という突き抜けたオチでした。もはや意外性があるのかないのか判別不能で、感心するやら笑うやらでした。

シガニー・ウィーバーが登場するサプライズには素直にびっくり。そういえば、オフビートな某宇宙人コメディ映画にも、ちょい役だけどおいしい役回りで出演してましたね。セルフプロデュースと作品選びがうまい。「シガニー・ウィーバー」というブランドを自分でよく理解しています。さすがはエレン・リプリー!

マーティが生きていたのも、別の意味でびっくりしました。たしかに、「実は生きていた!」はホラー映画のお約束ですが、5人のバイタルサインをリアルタイムで測定していた組織が気がつかないなんて間抜けすぎます。

ホラー映画の御都合主義にツッコミを入れるのは、野暮というもの。でも、『キャビン』には『ソウ』や『キューブ』のようなシチュエーションスリラー的な雰囲気もあるため、詰めの甘さが若干気になりました。

クリス・ヘムズワース演じるカートが、バイクで谷越えを目指すシーンは切ない。観客である私たちは、そこにバリアがあるのを知っています。仲間のために命を懸けようとしているのに、それは絶対に失敗する。ホラーらしからぬ、やるせない気持ちになりました。

エンディングテーマ

"Last": official video channel for nine inch nails

かっこよすぎるエンディングテーマは、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)の"Last"です。ナイン・インチ・ネイルズのディスコグラフィーのなかで、もっともモダン・ヘヴィネスよりな『Broken』に収録されています。

ナイン・インチ・ネイルズの曲は、この手の映画でなにかと重宝されていて、『キャビン』にも最高にハマってました。

お気に入り度

ネタバレの項目を随分と冗長に書いてしまいました。そんなふうに『キャビン』は、いろいろと話したくなる映画なんです。ホラー映画、それも欧米のが好きなら絶対に見逃せない意欲作です。というわけで、お気に入り度は星4つです。【投稿: マコネ

タイトル:
『キャビン』感想: ホラーの最先端、あるいは袋小路
カテゴリ:
映画
公開日:
2013年03月16日
更新日:
2014年04月15日

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